~ 貴族の遊び着から現代の戦闘服へ ~
ビジネスの現場でスーツを着るのは、現代社会で当たり前の光景。
けれど、ふと考えてみると「なぜ人はネクタイを締め、ジャケットを羽織るようになったのか?」って不思議ですよね。
実はスーツは、権威・合理性・平等主義が交差して生まれた、社会の“鏡”のような服装なのです。
◆ 貴族の嗜み「乗馬服」から始まった
17~18世紀のヨーロッパ。
上流階級の男性が着ていたのは、華美な刺繍入りの「コート」や「キュロット」
しかし、18世紀後半になるとイギリスの貴族たちは週末にカントリーサイドで乗馬を楽しむようになります。
ここで登場するのが、「ライディングコート(乗馬服)」
装飾よりも動きやすさを重視したこの服こそ、のちのスーツジャケットの原型となります。
つまりスーツの源流は「戦うための服」ではなく「遊ぶための服」だったんですね。
◆ 産業革命がもたらした「働く男の制服化」
19世紀になると、産業革命が社会を激変させます。
工場経営者・銀行家・商人など、新しい“働く紳士”が登場しました。
彼らは貴族のような絢爛豪華な服ではなく、勤勉・誠実・清潔を象徴する装いを求めました。
そこで選ばれたのがイギリス上流階級の「乗馬服」をもとにした仕立ての良い三つ揃いスリーピーススーツ。
つまりスーツは、社会の中で“仕事にふさわしい理性と秩序の象徴”として定着していったのです。
◆ ヴィクトリア朝の「控えめの美学」
ヴィクトリア朝イギリスでは、服装における「節度」「慎ましさ」が美徳とされました。
この時代に登場した言葉が “Dandy(ダンディ)”
ブランメル卿(Beau Brummell)が広めた“清潔で控えめ、だが完璧に仕立てられた服”の美学が、現在のスーツの根本思想になります。
つまり「目立たずに格を示す」ことこそが、ジェントルマンのたしなみとなったのです。
◆ 戦争とともに変わるスーツの意味
20世紀に入ると、第一次・第二次世界大戦を経て、スーツはさらに変化します。
軍服の要素(肩のライン・腰ポケット・ベルト位置など)が取り入れられ、
スーツは「規律・信頼・チームの一員であること」を示す記号になりました。
戦後の復興期には、スーツは「働くことの誇り」を表し、
企業社会が拡大する中で、スーツ=社会的信頼の象徴として世界中に広まりました。
◆ 日本での受容 ― 明治の文明開化から高度経済成長へ
日本では、明治時代に洋装が“近代化の象徴”として導入されます。
官僚や軍人がスーツスタイルを採用し、やがて企業人にも浸透。
戦後の高度経済成長期には、スーツを着ることが「真面目に働く男の証」となり、
同時に会社への忠誠や社会的信用を示す“現代の鎧”として定着しました。
◆ そして今:スーツは「自由の象徴」へ戻りつつある
近年では、ナポリ仕立てのような柔らかいジャケットや、アンコンスーツが人気です。
これは、スーツを形式ではなく「自分を表現する服」として再び見直す動き。
もともとスーツは、貴族が週末を楽しむために作った自由な服。
つまり現代の私たちは、数百年の時を経て、スーツを“自由の象徴”として取り戻しているのかもしれません。
◆ 結びに:スーツは社会の鏡である
スーツの形は、いつも社会の価値観を映してきました。
誇り高く、しかし控えめに。
個を示しながら、社会に調和する。
そのバランスの中に、スーツという服の魅力が生き続けています。
ならば、自分の個性・体形に似合ったスーツを自信を持って着こなしたいものですね。
皆さんの求めるスーツに巡り合うための情報整理になれば幸いです。
アルティジャーノ チャオ 東京銀座店
住所:東京都中央区銀座1丁目19−12 八木ビル 3階 B室
電話番号:03-3564-9530
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